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要注意なメンタル用語 「トラウマ」編

一般用語になってしまった要注意な精神医学用語の一つに「トラウマ」があります。
「その時の言葉にすごく傷ついて“トラウマ”になってー」などと面接場面で出てきます。
メンタル相談したくなる人が使いがちな言葉かもしれません。
今回はその「トラウマ」って何でしょう?というお話です。
 
 
|精神医学用語としての「トラウマ」|
トラウマとは英語のTraumaのカタカナ表記です。
精神科医療やメンタル業界でトラウマと言えば、すなわちPTSDのTの事。
PTSDとはPost Traumatic Stress Disorderの略。日本語では心的外傷後ストレス障害と直訳されます。
PTSDとは災害体験や暴力体験など、生死に関わるような凄まじい体験をした後に発生してくる場合がある精神疾患です。
 
 


|Trauma=心的外傷の由来|
トラウマが現在のようにほぼ精神的外傷の意味で用いられるようになったのは、
かのジークムント・フロイトが「物理的な外傷が後遺症をおこすのと同様に、過去の強い心理的な傷(Trauma)がその後も精神的障害をもたらす」のように記したからであるようです。
ここはちゃんとしてるな、フロイト氏。
 
 
|本人が訴える“トラウマ”|
さて、件の「その時の言葉にすごく傷ついて“トラウマ”になってー」といった表現はいかがでしょう。これは精神医学的Traumaに該当するでしょうか?
言い換えてみれば、「その言葉や出来事を簡単には忘れられないようなすごく嫌な思いをした」ということですが、そこには生死にかかわるような深刻さはありません。
 
私の捉え方では、精神医学的Traumaは、
その出来事を思い出すだけでも、話すだけでも辛く負担になるような出来事、そう簡単に話すこともできないくらい重大な出来事でなくてはTraumaと表現してはいけないのだと思います。
 
 
|私が“トラウマ”という訴えに出会ったら|
「その時の言葉にすごく傷ついて“トラウマ”になってー」という言葉には、
私は<ああ、すごく嫌だったのですね>とお返しすると思います。
“トラウマ”というあいまいな用語を使って分かったつもりになっても、解決を構築する面接にはなっていかないと思うからです。
不適切な用語で表現することは、不適切な感情への対処に結び付いてしまいます。
もちろん、ほとんどの方はテキトウに流したとしても大丈夫なのですが、
本当にこじれていってしまう人にはこの注意が必要だと経験から教わりました。
 
 
|回復の筋道|
真に深刻なTraumaであっても、“トラウマ”であっても、そのことから受けたダメージから回復するために必要なのは、
まずはそのダメージを適切に認めること。
過大評価も過小評価もだめです。
 
メンタル業者のお花畑的な理想の回復像では、
その後から、被害を免れた要素、どうにか生き延びた自分がいることを認め、
生き延びた源、生かしてくれたものはなんであるのかを考えていくこと、その経験を乗り越えてさらに強くなっていくこと、
となっていくようには思いますが、
私はそれは理想の回復ではないように思います。セカンドベストです。
 
理想の回復は「そんなこともあったけど、ま、いっか!」となることではないでしょうか。
忘れはしないけど、煩わされはしない、そうなってしまうのが良いのだと思っています。
そのために、逃げ回って時間を稼ぐのも対処の一法。

ちょっと簡単には書ききれそうにありませんね。
PTSDへの対処はいつか書くかもしれませんが、今回はこの辺で。